淫魔との戦記 妖狐の里
<1>
〜あらすじ〜
エキラ歴1832年のこと…
主にふたなりと、通常女性…稀に男性の存在するクローケー王国にて突然淫魔なる存在が出現する。
彼女達は皆美しいふたなりで…人々を犯そうと襲いかかり、襲われて果てた者は同じ淫魔になってしまう。
その淫魔に対抗するには、逆に淫魔をイカせれば倒せる。それ以外の為には指でふれることさえ出来ない。
かろうじて結界が通用し、精鋭の魔法戦士や魔導師が町を守っている。
そして王立魔導研究所員シエル・ローラックが淫魔を知る為の度に出る事になる。
(人族、人間ふたなり。生物研究室所属、好奇心性欲旺盛。真面目なのだが飽きっぽい。口が上手いのでガールフレンドは多い。)
「王都を離れて早1日…最後の…19人目の淫魔と遭遇して59秒足らず…
今のところ収穫は、イカせると淫魔化した人は元に戻るという発見…だけ。
淫魔に完全になっていない場合は、人族がイカせる、もしくは淫魔に近くなった魔力を別種の魔力で中和するか。完全に淫魔化したら…結局いかせるのが…ハァ…」
王都を出発し、淫魔19人と遭遇。
王都周辺の淫魔はもう充分に観察した。次の町に移動しながら観察という予定はものの見事に崩れていた。
そのためただただ淫魔とまじわりつつもイッてはいけないという生き地獄に苦しまされている。
そして荷物が重い。簡易結界に毛布に通信用の水晶に馬車の車輪(無論売却用)…馬車馬には逃げられた。
他にも同研究室から選抜されたメンバーはいたが即座に淫魔の仲間になってしまい、淫魔化は解いたが足手まといが目に見えていたため送り返した。
次の町まで徒歩で4日。
「生殺しだぁ…」
シエルは愚痴と溜息をこぼす。
歩くかレポートをまとめるくらいしかすることがないのだからしかたがない。
奇妙な世の中のくせに青い空で燦々とてる太陽が憎らしい。
無駄にカロリーを奪う。やる気が全く起きない。
王都に複数存在するガールフレンドに会いたい。力任せに犯したい。
そうでなければ伴侶が淫魔の犠牲になった人を口説き落して手ごめにしたい。
そんな風に考えていた…
そんな時だった。
「あのぉ…」
突然背後から声がかけられる。
猫背になっていた背がビクンと反る。
恐る恐るふりむくと、王都では見慣れない【着物】を着て狐の耳と尻尾をつけた少女がいた。
妖狐だ。戦闘力が高く、山に住む人族の一種。基本的に山の外に出たがらないが他種族には友好的だ。
彼女は息を切らせ、瞳と顔を真っ赤にしていた。どこか殺気にも似た必死さを纏っていた。
「はい…なにか?」
重い雰囲気とあからさまに面倒事を背負ってきただろう彼女から逃げたいと思う反面、可愛いとも思う。
重さ面倒くささ、好奇心と興味が心で渦巻く。金縛りにでもあったかのごとくにシエルの足は動かない。
「王都にはどちらへ向かえばよろしいでしょうか?」
「ああ、この街道を道なりに進めばつきますよ。王都になにか?」
出来る限り気分を悪くしないように返答する。
「病人なんです…それも大勢!!!」
命にかかわることだ。シエルは一応事情を聴くことにした。
元々魔物や亜人の研究が専門で、彼女の力になれるかもしれないと思ったのだ。
無論淫魔でなく妖狐相手なら抱けるし…此処で恩を売っておけばという下心もある。
彼女が言うことには
独自の魔術を使い淫魔と戦っていた妖狐達が熱をあげて、体に力もはいらず寝たきりになりどんな薬も効かないというのだ。
「場所を教えてくれないかな?診察なら出来るよ。」
「お医者さまですか!?」
彼女は今にも泣きそうな表情だったが、急に表情を明るくする。
「医者じゃないけどあらかた薬も作れるし、医者よりは淫魔に詳しいよ。」
二コリと笑ってみせると彼女はぎゅうとシエルをだき締めてくる。
抱かれたことでチャッカリ彼女の体に触れ、そっと尻などなでるも相手は気がつかない。体系はやせ型で胸は断崖絶壁、ふたなりだ。
話を聞くうちに淫魔を魔術で倒すことへの興味がめばえていた。さらに目の前の妖狐の素直な性格をしり、食べやすいと判断した。
これはもう行くしかない。ついでに荷物持ちも増える。
「…じゃあ、行きますよ?」
突然彼女はシエルをおんぶして、走り出す。
馬とも変わらぬ速さでシエルと荷物を背負い、土煙を上げて街道をそれて山の方に向かっていく…!!
シエルの叫び声が街道に響き、山道で反響する…
そして昼のうちに山をひとつ越え、おおよそ徒歩3日かかる山奥の隠れ里までたどり着いた。